お知らせ
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飲んだ薬はどのようにして体の中で働くのか?
こんにちは、歯科医師の鈴木です。 今回は、飲んだお薬がどんな風に身体の中で働くのかをお話したいと思います。 薬を説明するには、難しい言葉ですが大きく二つに分けて 薬物動態PHAMACOKINETICSと 薬力学PHARMACODYNAMICSとがあります。 今回は薬物動態についてお話致します。 薬物動態は薬の体の内での移動=代謝を意味します。 ① 薬を飲む ② 血液への薬の吸収 ③ 血液から効かせたい臓器への薬の移動 ④ 薬の身体の外への排泄 以上の話を中心に説明します。 薬物動態 PHAMACOKINETICS お口から飲むお薬は、ほとんど十二指腸で吸収されます。 十二指腸は胃よりも酸性度が低いからです。 そして薬は肝臓から出ている代謝酵素によって代謝されます。 薬物代謝の主な目的は、肝臓で薬物をより溶性(水に溶けやすい性質)の高い形に変換し、腎臓、肺、胆汁、皮膚、便に排泄されやすくすることです。 肝臓は薬を代謝する重要な臓器であり、薬は主に大規模なシトクロムPー450(CYP)スーパーファミリー酵素によりほとんどの薬物はCYPによる生体内変換を受けます。 吸収されなかった物質は血漿中に残り、最終的に腎臓を通過して尿中に排泄されることになります。 薬の飲むとどのように血液中に薬が漂うかを示す表があります。 それを血中濃度曲線といいます。 血中濃度曲線 • 血液中の薬の時間経過は山型曲線を描く。 多くの薬は血液中の濃度が一定以上になると効き目が現れ、それ以下になると効き目が消えていきます。 • この血中濃度曲線は、その薬がどのくらいの時間で効き目を現し、いつまでそれが続くかなど薬の体内での行動を表します。 • グラフの1番高いところが最高血中濃度(CMAX)、そこに到達するまでの時間(TMAX)は、薬の効き目のスピードを知る目安になります。 • CMAXの半分に減るまでの時間が半減期(T1/2)で、半減期が長いほど薬は体の中に長く留まり、効き目が続きます。 • 濃度曲線の下の面積をAUCといい、これが大きいほど体の中で薬がたくさん利用された(=バイオアベイラビリティが高い)と判断できます。 では、次に連続して飲む抗生物質などを考えてみましょう。 薬を連続して飲むと、定常状態という薬に効果が出ている状態を考えてみます。 定常状態 (STEADY STATE) 薬が血中に入ってくる量と出ていく量が等しくなる状態 定常状態とは、薬を一定時間ごとに繰り返し投与する時、特に抗生物質があげられますが、身体の中で薬が効いている、有効域に達している状態を意味します。。 下の図はバンコマイシンという抗生物質を飲んだときの曲線です。 連続して飲む必要がありますが、なぜ一日三回毎食後飲まないといけないかというと、薬の有効域という薬がやっと効き出す領域にたどり着くまでには、最低4回目から5回目の服用で、やっと薬が効いてきているという事が分かります。 なので、連続して飲まないといけない薬は必ず用法を守って連続して飲んでいく必要があります。 今度は薬物排泄について考えてみましょう。 薬が体から排出される時間は薬を飲むのをやめたら、すぐに身体の中に薬がなくなるわけではないのです。 薬は連続で飲むのをやめると血液中の薬の濃度は半分になり、徐々に時間をかけて身体から薬の量が減っていき、時間がかかるのです。 このように薬の連続服用をやめても、薬の種類によっては、身体の中にまだ残っている薬もあります。 歯科でよく使う抗生物質は、この身体の中で残っている分も含めて3日間から4日間ときめております。 人間の身体は非常に複雑で、すごく精密にできていて、研究が進むとこのような複雑な代謝も解明されています。 複雑な薬の身体での代謝や分解を理解して、薬を処方しています。 ダイナミックな人間の身体はとても勉強していて面白いです。また論文などを拝読しましたら皆さまにお知らせいたします。 歯科・口腔外科医 鈴木孝美
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臨時休診のお知らせ
ドイツ研修参加のため、3月16日(木)~21日(火)まで休診とさせていただきます。 緊急時の対応はこちらをご覧ください。
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『2023年トルコ・シリア地震』ヘの支援について
こんにちは、谷村歯科医院 院長の谷村です。 2月6日にトルコとシリアの国境付近で発生した大地震で、多くのビルが崩壊し多数の死傷者が出ているとのことです。 日本赤十字社の公式サイトより 私は30年以上前にトルコとシリアに行ったことがあり、今回の地震のニュースを聞きとてもショックでした。 現在、国際赤十字社(イスラム圏内は赤新月社)が救助活動や復興支援を行っています。 日本赤十字社はこれらの活動を支えるための救援金の受付をしており、私も少しでも役に立てればと思い寄付をさせていただきました。 2023年トルコ・シリア地震救援金 被災された地域の1日も早い復興を心より願っております。
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『歯』にまつわる情報について
こんにちは! 歯は全部で何本あるか知っていますか?歯があるのが当たり前になっていて、あまり気にしている方は少ないと思います。そこで歯について考えてみましょう! まず乳歯は20本、永久歯は(親知らずを含む)32本あります。 乳歯は永久歯と比べて小さく、エナメル質は薄く弱い為、むし歯になると急速に進行して神経まで達するような痛みを伴うむし歯になりがちです。 まずは下の前歯が生えてきたらガーゼなどでお手入れを始めます。 さらに上の歯が生えてきたら、一日一回は歯みがきが必要です。 さらに生え始めたばかりの歯(乳歯と永久歯)は菌に弱いため、虫歯になりやすく進行も早いです。 特に混合歯列期(乳歯と永久歯が混ざっている時)は歯ブラシで磨きにくい為、親御さんが仕上げ磨きをしてあげるといいですね♪ さらに細かく見ていくと、歯の中の構造は『エナメル質』・『象牙質』・『セメント質』・『歯髄』『歯肉』・『歯槽骨』・『歯根膜』からできています。 歯が口の中に露出している部分を『歯冠』、歯冠より下の部分を『歯根』といいます。 『エナメル質』歯冠部の表面を被っている人間の身体組織の中で最も硬い組織です。 でも、酸に簡単に溶けてしまうはという弱点があります。 『象牙質』エナメル質、セメント質の内側にあり、歯冠部から歯根部までの歯を形づくる組織です。 エナメル質よりも柔らかく、酸に溶けやすい組織です。 象牙質には象牙細管という細い管が通っていて、管の中は組織液で満たされています。 『セメント質』歯根部表面を被っている組織で、歯根膜によって歯槽骨と結合しています。 『歯髄』一般に神経と呼ばれる組織で、神経線維のほかに血管やリンパ管などが通っています。象牙質に栄養を補給しています。 『歯肉』歯肉(歯ぐき)は、歯根を取り囲んでいます。歯肉はとても軟らかい組織であり、ちょっとした刺激で傷ついて出血したりします。 『歯槽骨』歯肉に包まれて歯を支えているのが歯槽骨(顎の骨)です。歯は歯槽骨のくぼみにしっかりと根を下ろして、物を噛む時などに加わる強い力に耐えています。 『歯根膜』歯根膜は歯周靭帯とも言われ、歯と歯槽骨の間をつなぎ、まるでクッションのように歯にかかった圧力を吸収・緩和しています。 また極端に固いものを噛んだ時に痛いと感じるのは、この歯根膜が圧力センサーの働きをしているからです。 歯は食べ物を噛み砕いて食感を楽しんだり、会話をする上での発音を助けたり、顔の形を整えてくれたりなど、役割があるので、1本1本大事にしましょう♪ ○8020運動 『8020運動』とは、日本歯科医師会が推進している「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動です。 20本以上の歯があれば、食生活にほぼ満足することができると言われています。 そのため、「生涯、自分の歯で食べる楽しみを味わえるように」との願いを込めてこの運動が始まりました。 食事は生活の中でもとても大切な事なので、年齢を重ねてもしっかり噛めて、味わえるように歯を大切にしていきましょう! その為には定期検診やセルフケア(お家でのケア)が大切です。 定期検診では、虫歯の早期発見、早期治療や歯周病の予防、歯垢、歯石除去などができる為、虫歯や歯周病が悪化する前に発見できます。そのため、最悪抜歯になるリスクを減らすことができます!! しかし歯科医院には毎日通うことはできないため、セルフケアが特に大切になってきます。 鏡を見ながら1本1本しっかり歯ブラシを当てて磨けるといいですね♪ 朝起きる時に細菌が一番増加するので、寝る前の歯磨きを丁寧にしっかり磨くのがおすすめです^ - ^ぜひやってみてくださいね! 歯科衛生士 楠
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岡本太郎の絵を展示しました
岡本太郎の絵が手に入りましたので、診療室に展示することにしました。 若い人はご存知ないかもしれませんが、50年前の大阪万博のシンボルである『太陽の塔』の製作者です。 身近なところでは、渋谷駅の井の頭線のホームから伸びているコンコースの壁に、とても大きな絵画が展示してありますが、それも岡本太郎の絵です。 渋谷駅の絵は元々、大阪万博と同じ時期にメキシコに新しくできるホテルのために制作したものだそうです。(ホテルは開業前に倒産して、しばらく絵画の行方がわからなくなっていました) この絵のタイトルは、『哄笑』といいます。 リトグラフのため、同じものが多く存在しますが、50年前のものにしてはとても状態が良かったです。 もし患者さまでご来院された際は、ぜひ御覧ください。
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シーラントで虫歯を予防しよう!
みなさんこんにちは( ¨̮ ) お子さまの歯磨きで、「仕上げ磨きをあまりさせてくれない」また、「奥歯までしっかりと磨けているか心配」というお悩みはありませんか?歯は唾液の中のカルシウムなどを吸収して徐々に強くなっていきます。しかし、生えたばかりの歯の表面は未完成で弱いため虫歯の進行も早いので、積極的に予防をすることが必要です!そこで虫歯予防の1つにシーラントという方法があります。今日はそのシーラントについて詳しく説明をしていきます! 【シーラントとは】小窩裂溝填塞(しょうかれっこうてんそく)と呼ばれることもある、虫歯の予防方法のことです!フッ素が配合された歯科用樹脂素材(レジン)でコーティングすることで歯を虫歯から守るというものです。 適応歯は、萌出後間もない健全な乳臼歯や永久歯が対象になります。乳歯や生えたばかりの永久歯は、エナメル質が若いため表面の気孔が多く開いています。また石灰化が不完全のため、特に6歳臼歯と呼ばれる奥歯は噛み合わせの力が強く働くので、しっかり虫歯予防をしなければ永久歯が生えそろう前に虫歯になってしまう可能性があります。 そして6歳臼歯をはじめとした奥歯は咬合面(咬む面)の溝が複雑な形状をしているため、普段の歯磨きだけではなかなか汚れが落としきれないことがあり、シーラントによる虫歯予防ではこの溝を埋めるために溝に食べカスやプラーク入り込んでしまうことがなく、また歯磨きもしやすくなるため、効果的に虫歯予防ができるようになるのです。 【シーラントの流れ】では実際にシーラントをどのように塗布するのか、治療の流れを説明いたします。 ①最初に歯の溝の部分の汚れを取り除きます。 歯の溝には食べかすのほか、ベッタリとついた歯垢が入り込んでいるため、専用のブラシでしっかりと取り除きます。 ②歯を乾燥させてシーラントの前処理の薬剤を塗布し、数秒置いてから水で洗って乾燥させます。 次に歯の表面と溝の中の水分を取り除き、シーラントがしっかりとくっつくような下処理剤を塗布します。(この操作は行わない場合があります) ③歯の溝にシーラントを塗ります。 歯の溝の中がきれいになったらシーラントを細いノズルを使用して、隙間ができないように、また多すぎないように慎重に塗布していきます。 足りないところがあるのはだめですが、多すぎて他の表面に溢れてしまうと噛んだ時にそこだけ当たってかみ合わせがおかしくなてしまいます。 そのため、シーラントの塗布は慎重に、またどうしても溢れてしまった場合は固まる前にしっかりと拭き取ります。 ④光を当ててシーラントを硬化させます。 シーラントの液は、光を当てると固まるようにできています。(特定の波長の光に反応して、通常は青い光です) 液の塗布が終わったら、光重合器で照射してシーラントを固めます。 ⑤シーラントが正しく塗布できているかチェックをする。 光を当てたあとは、短針などを用いて、シーラントがしっかり固まっているかチェックをします。 この時に剥がれてしまったり、隙間がある場合は再度シーラントを塗布して光を照射します。 またシーラントを塗布する面積が大きすぎたり厚すぎた場合は、ていねいに削り落として調整します、 確認が終わったらシーラントの塗布は終了になります。 ★シーラントは歯を削らないため痛みがありません。小さなお子さまでも安心して処置ができます!そしてシーラントをした歯は、していない歯に比べると、4年以上で60%も虫歯予防効果があることも研究結果で分かっています! 【⚠︎︎注意点】・シーラントだけでは虫歯予防はできない! シーラントは虫歯予防にとても効果を発揮しますが、奥歯の溝だけが虫歯になりやすいという訳ではありません。歯と歯の間も虫歯になりやすい部位です。こちらは、シーラントでは予防できないため、しっかりした歯磨きが必要です!歯と歯の間は糸ようじやデンタルフロスなどを使い綺麗にしましょう。また、フッ素を併用するとより虫歯になりにくくなります。 ・シーラントは永久的ではない シーラントはむし歯治療の詰め物と比べると耐久性は少し劣ります。 歯ぎしりなどで取れてしまったり、時間が経つととれてしまうこともあります。そのため定期的に取れていないか、他に虫歯がないかを定期的に歯科医院で検診を行う必要があります。 【虫歯予防の1つフッ素との違い】虫歯のなりやすい箇所の一つである奥歯の歯の溝の予防に特化した予防方法がシーラントです。 それ以外の予防方法ではフッ素塗布なども有名ですが、フッ素塗布は歯全体の歯質強化が目的のため、シーラントとフッ素は違います。 【まとめ】 シーラントの最大のメリットは、虫歯になりにくくなるということです。 ですが、シーラントを行ったからといって、必ずしも虫歯にならないわけではありません。 シーラントをした後も毎日丁寧に歯磨きをしましょう!また、乳歯や生えたての歯への処置が最も有効ですが、大人の永久歯にも効果があります。大人でも歯の溝には虫歯が多く、歯の溝の奥に溜まった汚れは歯ブラシで除去しにくいところもあります。大人も子供もシーラントを上手に活用して、虫歯になりにくい健康な歯を手に入れましょう! 歯科衛生士 池田
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歯並びはなぜ悪くなるのか?
歯並びはなぜ悪くなるのか? きれいに並んでいる歯並びはいいですよね。しかし歯並びはいろいろな影響できれいに並ばないことが多いです。 今回はどのような影響が歯並びに関係してくるのか、また歯並びが悪いとどのようなことが起きるのか説明をしていきます。◯歯並びは、歯の大きさ・あごの大きさが関係していますこれらには人種別に特徴があり、日本人はあごが小さい傾向があると言われています。 その他、成長過程での異常が原因になることもあります。無意識にやってしまった癖が、だんだん歯並びを悪くしていってしまった可能性があります。 例えば、指しゃぶりや舌の先が日常的に自然と上下の歯の間についている癖の事である舌突出癖(ぜつとっしゅつへき)、頬杖(ほおずえ)、口呼吸など子供の頃に癖づいた行動が歯並びに影響することがあります。 そのため、このような癖があるお子さんは保護者様が注意して改善するようにしましょう。 また、鼻がアレルギーなどでいつも詰まって口で呼吸している場合も唇を閉じる力が弱くなって前歯の歯並びが悪くなりやすいです。耳鼻咽喉科を受診して治療するようにしましょう。 現代人の食事は加工された柔らかい物が多く、そのため顎の発達が悪いと言われています。顎が小さいと歯が全部生え揃うスペースが無いため歯並びが悪くなってしまいます。 小さいうちから柔らかいものだけでなく、しっかりした食感の食べ物を取り入れるようにしましょう。 ◯歯並びが悪いとどのような事が起こるのでしょうか? 悪い歯並びは、歯や口腔内に悪影響なだけでなく、あなたの身体の不調に関係しているかもしれません。 ・虫歯になりやすくなる・将来歯が抜けてしまう可能性が高くなる・歯周病が進行しやすくなる・顎関節症になりやすくなる・親知らずや歯周病の影響を受けやすくなる他にも・歯や顎が動かしにくい・歯が欠けたり、擦れたりしやすい・食べ物が噛みにくい・すぐ歯にはさまる・頭痛や肩こりがひどい身体にこんな症状が出ていたらそれは歯並びや噛み合わせのせいかもしれません。 ◯悪い歯並びの症状例 次に悪い歯並びの種類について説明します。実にいろいろな種類の悪い歯並びがあります。・叢生(そうせい)歯が上下にデコボコだったり、となりの歯と重なっていたりする状態。『八重歯』や『乱ぐい歯』と呼ばれる。 ・上顎前突上の前歯が前の方に飛び出している状態。上のあご全体が突出していることもある。いわゆる『出っ歯』のこと。 ・下顎前突咬んだときに下の歯が上の歯よりも外側になっている状態。歯だけが傾いている場合や、下のあご全体が前に出ている場合がある。 ・開咬奥歯が咬み合っているときに前歯が開いている状態。前歯で物を咬み切りにくく、発音もしにくい可能性がある。 ・空隙歯列(くうげきしれつ)歯と歯の間にすき間がある状態。特に前歯の中心にすき間があると物が挟まりやすいだけでなくとても目立つ。 ・過蓋咬合(かがいこうごう)上下の歯を咬み合わせたときに上の歯が下の歯をほとんど見えないほど深く覆う状態。食べ物を細かく砕く、すりつぶすなどがしにくい咬み合わせ。 ・交叉咬合(こうさこうごう)左右のバランスが悪く、歯列の一部または半分ほどがずれてしまっている状態。顔がゆがんで見えることがある。 ・顎変形症一般的な歯を動かす矯正治療のみでは十分な咬み合わせにするのが難しい難症例。骨格的なものなので、あごの骨を削るなどの外科手術も併用する。(この場合の矯正治療は健康保険適応になる場合があります) ★歯並びが良くなると審美面や口腔内の健康はもちろん、身体全体の健康面でたくさんのメリットが得られます。現在、少しでも違和感や症状、不安がある方は矯正歯科または定期検診で行く歯科医院で相談してみましょう。 歯科アシスタント 松本
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俳句から読む江戸時代のむし歯事情
みなさんこんにちは¨̮ )/早いものでもう気がついたら1月でびっくりしました〜🤦♀️今回は皆さんが1番気にしてるであろう、『むし歯』のお話です。現代人を悩ませている『むし歯の悩み』って、今の時代だけなのでしょうか?歯の悩みはどんな時代にもあるようですよ〜🥲日本の“ わびさび ”を代表する俳句から、江戸時代の当時のむし歯事情を想像してみましょう! ●昔の人もむし歯になったのか?時代とともに、食生活や生活スタイルはずいぶんと変化しました。 ですが、はるか昔の生活を俳句から読み解いていくと、お口の健康に関する悩みは、今も昔も変わらずあったことがわかります。 それどころか、当時は今のように治療が進んでいなかったため、多くの人が歯を失ってしまうほど症状が悪化することが多かったようです。そんな『歯』に関連した俳句は、古くは江戸の時代からありました。 ●俳句の中のむし歯江戸時代を代表する2人の俳人も、実は私生活では、歯が痛くて悩んでいたそうです。 その痛みや苦しみさえも風情ある俳句にしてしまうなんてすごいですが、本人たちは大変だったでしょうね! 〜松尾芭蕉〜 江戸時代前期に活躍し、日本でその名を知らない人がいないほど有名な、松尾芭蕉。 旅をしながら、美しい自然を旅情たっぷりに詠んだ『奥の細道』が、代表作として知られていますよね。 『閑さや岩にしみ入る蝉の声』など、趣のあるわびさびを織り込んだ多くの俳句は、誰もが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。 ですがそんな芭蕉も、歯の悩みを抱えていました。そのことがわかる俳句が、こちら。 「 結ぶより 早歯にひびく 泉かな 」 手に泉の水をすくうと、口へ運ぶより先に、水の冷たさが歯にしみるように感じる。(その他の解釈もあり) 「 衰へや 歯に喰いあてし 海苔の砂 」 芭蕉が海苔を頬張ったときに、混じっていた砂を噛んでしまい、ズキンと痛みを覚えたその瞬間に身の衰えを切実に感じた。 これらの句は芭蕉が四十代の頃の俳句とされていますので、加齢にともなって歯茎が弱まり、歯周病が加わっていたのではないか?と想像されます。 歯の状態から体の衰えを痛感し、嘆く気持ちを句で表現しながら旅をしていたのでしょうか? 〜小林一茶〜 むし歯に悩まされていたのは、芭蕉だけではありません。 「やせ蛙 負けるな一茶 これにあり」などの俳句を残した、江戸時代後期に活躍した小林一茶は、49歳のときには全ての歯が抜けてしまったようです。 65歳で亡くなったそうなので、晩年はずいぶんと不自由な生活だったことが想像されます。 「 歯が抜けて あなた頼むも あもなみだ 」 最後の歯を失って歯の大切さを悟り、「南無阿弥陀」の唱えようとするが、歯が無いため「なむあみだ」ではなく、「あもあみだ」となってしまう。 自虐的にも捉えられるユーモアと悲しさをまじえて、このような句を詠んでいます。 入れ歯はまだ広く普及していなかったようですから、その後の食生活を想像すると、晩年の苦労がうかがえますね! ●江戸時代の虫歯治療 江戸時代の抜歯方法 江戸時代の治療風景 江戸時代に国内で初めて製造された歯ブラシは、鯨ひげの柄に馬の毛を植毛したものでしたが、なかなか広まらず、歯ブラシが本格的に普及したのは大正時代になってからだそうです。また、江戸時代の人の骨を調べると、年齢を重ねたときに健康な歯を維持することが難しく、歯を失ってしまう人がとても多いことがわかるそうです。当時の口中医や入れ歯師と呼ばれる人たちによる治療は、薬の塗布や抜歯がメインだったようで、むし歯治療はまだまだ進んでいなかったというわけですから、それも納得です。現代でも有名な俳人が、当時むし歯で困っていたなんて、有名・無名にかかわらず、歯の悩みは万人共通だったのですね。 少し親近感さえ湧いてしまいますが、むし歯や歯周病を甘く見ると歯を失ってしまう怖さは、江戸の頃から変わらないことがわかりました。歯に令をつけた『齢』を『よわい』と訓み、人間の年や人生・生命を示しているのも、まさに人間の歯の変化が、その人の齢を表すことからきているのでしょう。ですが江戸時代とは異なり、今は歯の治療だけでなく、予防に力を注ぐこともできるようになりました。 ●まとめいかがでしたか?昔の人達はあんまり良い治療が受けられず随分と苦労したのがわかりましたね。現代社会はかなり医療が進んでむし歯を予防できるものや、虫歯になりにくくする材料がたくさんできました。皆さんも松尾芭蕉や小林一茶のようにお口の悩みを抱える前に、日々のメンテナンスを心がけて、気になることがあればぜひ早めに相談してくださいね! 歯科衛生士 山口
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3年ぶりの講習会の試験官
こんにちは、谷村歯科医院 院長の谷村です。 先日、歯科用レーザーや輸入歯科機器販売の会社が主催する講習会及び認定医の試験があり、その試験官として参加をいたしました。 この講習会は3年前と6年前に試験官として参加したことがあります。 3年前(2019年)の講習会参加の様子 他のセミナーや講習会同様、コロナ禍のためにこの講習会も2020年、2021年ともに中止となっておりました。 今回、規制が緩和されたのでこの講習会も開催され、主催者より試験官として参加を打診されました。 会場は三田にある会議室です。とても綺麗な会場でした。 講習会は土曜日と日曜日の二日間行われます。 今回も講師の先生は、UCSF歯学部予防修復学臨床教授のDonald J. Coluzzi先生です。 講義はすべて英語で行われ、私のレーザーの師匠の永井先生が翻訳します。 初日の夜は懇親会に引き続き、試験対策の勉強会がありました。 講義が終わると筆記試験があり、その後実技試験となります。 実技試験には実際の歯科用レーザーが使用されるので、安全のため各ブースが離れています。 私の担当は半導体レーザーという種類でした。 つまり歯肉を切ったり止血したり殺菌したりすることができます。 今回は永井先生の他に、レーザー学会の盟友?の河合先生が同じく試験官として参加していました。 河合先生にお会いしたのも3年ぶりでした。 最後はColuzzi先生とツーショット。最初の頃と比べると少しお年を召したかな? 試験官としての参加は緊張しますが、逆に色々と勉強し直すことができたので参加できて良かったです。 また来年も参加を打診されたらぜひ行こうと思います。 久しぶりのデンタルショー参加 少し前になりますが久しぶりにデンタルショーに行きました。 この東京デンタルショーも新型コロナの影響で3年ぶりの開催になります。 会場は前回と同様で東京ビックサイトでの開催です。 開催された10月はちょうどコロナ感染が少なかったこともあり、すごく賑わっていました。 ちなみにこのデンタルショーは歯科関係者と歯科関連学校の学生さんのみ入場できるので、全員歯科関係の仕事や学生ということになります。 やはり久々の開催ということもあり大盛況です。ただ、全体の規模としてはやや小さく、完全にコロナ禍前の規模に戻るのはもう少し先になりそうです。 谷村歯科医院の歯科機械はすべて『ヨシダ』という歯科メーカーの物を導入しています。 今回、最新式のCTを確認しましたが、撮影後に画像が出てくるまでのスピートがとても早くなっていたのに驚きました。 現在当院のCTでは画像処理をしてモニター上に表示されるまで数分かかるため、忙しい時などは患者さまと確認するのは後日になることが多かったのですが、これならすぐに確認できるので時間の効率化につながりいいと思います。 そして今回のデンタルショーでとても驚いたのがこの型取りの材料です。 虫歯などで歯を削ったあとは歯の型を取ります。 型取りの材料は、寒天とアルジネートという物を合わせて使用します。 寒天はいわゆる食べる寒天と同じような成分ですが、歯科用の材料なので食べられません。 アルジネートとは、粉と水を混ぜると軟らかいペースト状になり数分すると固まるので、歯科の型取りで最もポピュラーな材料になります。 寒天は温かくして歯の周りを正確にとり、その上に被せるように少し冷たくしたアルジネートをという材料を使います。 つまり温度がまったく違うので、分離したり失敗することがありそれが時間と労力の無駄になっていました患者さまも何度も同じ型を取るとうんざりしてしまいます。 しかしこれは精密なところを取る材料もアルジネートなので、材料同士はが分離するリスクがほぼなくなります。 寒天とアルジネートという組み合わせは学生の頃から決まっていましたので、このシステムを見た時は衝撃的でした。 ただしいい事ずくめのこのシステムも、細いところの型が取れないなどの欠点があるのでケースによって使い分けていきます。
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TACsという頭痛と歯の痛み
こんにちは、歯科医師の鈴木です。 今回は私が所属している日本口腔顔面痛学会で取り扱っている頭痛が、歯の痛みとして現れる場合をお話します。上のパンフレットは日本口腔顔面痛学会が推奨しているポスターです。 歯が原因でないのに頭痛のために歯の痛みが起こる場合があり、その場合は歯の痛みが全身の病気のサインとなっています。 今回は以前にもブログに書かせていただいた、歯が原因でない痛み(非歯原性疼痛)のお話をしたいと思います。1 非歯原性歯痛とは? 非歯原性疼痛とは、歯や歯周組織に異常がないのにも関わらず歯に痛みを感じる状態のことであります。一口に非歯原性疼痛と言っても、さまざまな種類があります。① 筋.筋膜性歯痛② 神経障害歯痛③ 神経血管性歯痛④ 上顎洞炎歯痛⑤ 心臓性歯痛⑥ 精神疾患または心理社会的要因による歯痛⑦ 特発性歯痛⑧ その他の様々な疾患による歯痛に分かれます。 今回お話しするのは③神経血管性歯痛です。 この単元は=頭痛となります。 脳の中の血管の一時的な炎症により頭痛が生じると、歯の神経である脳神経の一つの三叉神経という神経も興奮して、頭痛と同時に歯痛が生じるのです。この神経血管性歯痛にはさらに種類があります。① 片頭痛② 緊張型頭痛③ 三叉神経自律神経性頭痛(TACs)今回は上記3つのうち、③三叉神経自律神経性頭痛(TACs)の話をします。 2 三叉神経自律神経性頭痛(TAC)とは?TACとはTrigeminal Autonomic Cephalagiaの略です。 この病名を和訳すると、三叉神経自律神経性頭痛といいます。 この頭痛の病態は、① 一片側性の頭痛、左か右どちらかの頭痛② 頭痛と同じ側の頭部副交感神経系の自律神経症状を伴う といった症状です。 例えば、頭痛と同じ側の目が充血して赤くなったり、涙が出たり、鼻が詰まったり、鼻水がでたりという症状があります。この二つの症状は共通してあり、種類は四種類あります。① 群発頭痛(CH)② 発作性片側頭痛(PH)③ 短時間持続性片側神経痛様頭痛発作(SUNHA)④ 持続性片側頭痛(HC) 上記の図のように4つの頭痛により、痛みが歯の方向にいくのがわかります。 このように歯が痛くなってくるので、歯が虫歯などの原因でないにも関わらず歯科を受診する事が多くなるのです。(上記の右端のMIGRAINEとは片頭痛の事です) では、この4つの種類のTACsのそれぞれの特徴を話していきたいと思います。 ① 群発頭痛ある一定の期間のみ頭痛があり、何も症状がない時期もあります。 この頭痛は同じ季節や同じ時間に頭痛が起こるのも特徴です。 飲酒で発作が誘発されます。 男性に多いとされています。 頭痛の起こる時間が15分から180分です。痛みは上の歯の痛みが出るので注意が必要です。② 発作性片側頭痛と④ 持続性片側頭痛やや女性に多く30代に多く見られます。 頭痛の起こる時間は平均17分です。 この2つの頭痛にはインドメタシンという鎮痛剤が効くのが特徴です。 頭痛が起きると激痛であるため、顔を手で覆うような仕草をするのであたかも歯が痛くて苦しんでいるように見えます。③ 短時間持続性片側神経痛様頭痛発作頭痛の起こる時間は数秒で電撃様の痛みを感じるこの頭痛はとても稀な頭痛ですが、一番最初にお話しした頭痛と同じ側の目や鼻の症状が沢山出るのが特徴です。 電撃様の痛みのため、三叉神経痛という病気と似ているため鑑別しなくてはいけないです。以上が三叉神経自律神経性頭痛(TACs)に関する痛みになります。 いずれの頭痛も歯の痛みとして出ることが多いので、私達歯科医師はレントゲンや様々な道具を使い歯が原因でない痛みの場合はすごく注意しながら診療しています。 最近では神経内科のお医者さんや脳神経内科、外科のお医者さんと一緒に合同で行う学会の勉強会も増えています。 歯の痛みは単に歯の痛みではなく全身の病気のサインとなっているため、我々歯科医師も日々勉強をして必要のない治療をしないように努力しております。これを読んだ皆さまは、とりあえず歯が痛いなら、歯科医院に受診して下さい。 それから必要に応じて様々な検査をして、医師の先生と連携して痛みを無くす努力を致しますので安心して歯科に受診して下さい。 鈴木 孝美