顎関節症の原因

 

こんにちは、歯科医師の鈴木です。

今回は顎関節症の原因のお話しを致します。

顎関節症の原因として考えられるのは『持続的な強い力による顎の関節や筋肉への過重負担』であり、なかでもパラファンクションが原因とされています。

バラファンクションとは何か
『パラファンクション』というのは『オルソ(正常)ファンクション』に対する言葉で『異常機能活動』と訳されており、歯ぎしりやくいしばりなどのブラキジズムや、口唇や頬の粘膜を噛む癖などの関節や筋肉の非生理的な運動を指す用語です。
パラファンクションは日中に起きるものと夜、夜間睡眠時に起きるものと2つに分かれます。
それぞれどのような状態なのでしょうか?

日中のパラファンクション

日中のパラファンクションは、主にくいしばりかみしめです。
人間は仕事に集中したり、肉体労働したり、ストレスに耐えているときなど無意識にくいしばりをして、それが咬む筋肉や頭の周囲の筋肉の緊張を引き起こします。
また、不自然な姿勢や頬杖、顎の下に物(電話、楽器)を挟む癖もパラファンクションに含まれます。

睡眠時のパラファンクション
睡眠時のパラファンクションはブラキシズム(歯ぎしりとくいしばり)で、特に睡眠のレム睡眠のブラキシズムは、歯に破壊的な影響を及ぼすことが知られています。
睡眠中は大脳皮質が抑制されず、異常な咬合力が発揮されます。
意識のあるときより、6倍以上の力がかかると言われています。
このようなくいしばり・かみしめ・歯ぎしりによる顎関節症の治療には、マウスピースが効果があります。

マウスピースについて

マウスピースには、ソフトタイブとハードタイプがありますが、顎関節症の治療には調整が可能なハードタイプが推奨されます。
ソフトタイプは装着感に優れているものの、歯ぎしりが強いとちぎれてしまいます。
またソフトタイプだとマウスピースをきつくしたりゆるくしたり、高さを変えたりといった調整ができません。
そのため通常はハードタイプ(ペットボトルの少し厚い感じ)を主に使用します。
ハードタイプは歯ぎしりに強いものの、それでもマウスピースを壊して歯を結果的には割ってしまう方がいらっしゃいます。
その場合はもっと根本的な治療が必要になります。

ボトックス治療

顎関節症の治療方法として、マウスピースの他に、『ボトックス治療』があります。
最近ではかなり研究されて、とても咬む力すなわち咬合力が強い方に筋力コントロールとして、ボトックス治療が有効です。
ボトックスは美容やエステで用いられますので、皆さんの中でボトックスを聞いたことがあるかもしれません。
ボトックスはちなみに商品名で、治療としては『ボツリヌス治療』になります。
ボツリヌス治療は筋の活動を抑える治療になるので、歯科の分野でも用いられます。

ボツリヌスと聞くと、しわをなくしたり少なくしたりどうしても美容目的の方が印象が強い方も多いと思いますが、今歯科治療の異常な咬む筋肉の力のコントロール治療として注目を集めています。
ボツリヌス治療とはボツリヌス菌が作り出すボツリヌストキシンというタンバク質を皮下注射して、主に咬む筋肉もなかでもメインとなる、咬筋の力を弱める事を目的としています。
咬筋への少量の適量の注射により、過剰な咬筋の活動や緊張の改善をして、正常な咬合力に減量するということが目的です。

ボツリヌス治療は医科でも今広範囲に使われていて、同じ筋肉の過活動を抑える治療としてトイレにすぐ行きたくなる過活動膀胱に対して、膀胱の過活動を緩める治療が行われています。
歯の破折を防ぐために、左と右にある咬筋に適切な量のボツリヌス注射は、痛くない短い針を使っていますのでご安心なさって下さい。当院でご希望の方はお申し付け下さいませ。

ボツリヌス治療の効果は一回の注射で、約半年から一年間となります。
またボツリヌス治療は少しずつ効果がなくなってしまう特徴がありますので、検査をした後で必要なら追加注射致します。

顎関節症の治療でマウスピースを作ったけれど割れたり違和感でつけたられない方、顎関節症の症状が改善しない方は新たなボツリヌス治療もございますので、お話をお聞きになりたい方は当院までお尋ね下さい。

※マウスピース治療は保険適応可、ボツリヌス治療は保険適応外治療になります。

歯科医師・口腔外科医 鈴木孝美