インプラントの表面の材質について

こんにちは、歯科医師の鈴木孝美です。

今回はインプラントの表面の材料の話をしていきます。

当院の使用しているインプラントの表面には、イドロキシアパタイト』が覆っているインプラントを使用しています。

ハイドロキシアパタイト(HA)とは、リン酸カルシウムの事であり、歯と骨の主成分です。
このHAインプラントを埋入した部分が埋入された側の骨とどのように付いていくのかを説明致します。

HAインプラントと骨と結合は『カルシウムブリッジ』という化学的結合によって、隙間がない状態です。
この結合を専門的な言葉で『Biointegration』(バイオインテグレーション)と言います。

バイオインテグレーションはとても強く結合します。
インプラントの論文の中では、このHAの部分の剥がれやすさを指摘して否定的な論文もありましたが、さらに研究が進み、もしもミクロ単位でHAが剥がれたとしても全く問題ない事が分かりました。

インプラント自体はチタンという金属材料で出来ています。
世の中にはこのチタンのみをインプラントとして使う場合もあり、ではチタンと骨がどう結合するのかというと、チタンインプラントと骨は密着する『Osseointergration』(オッセオインテグレーション)と言います。

チタンインプラントのメカニズムは、チタンインプラント埋入後、初めのインプラントと結合している初期固定が経時的に低下していくのですが、しかしオッセオインテグレーションによりチタン表面に作られてくる新しい骨(新生骨)による二次的な固定力が出現して8週間後以降は安定した骨との固定が認められます。
もし、HAインプラントの表面が剥がれ落ちても、チタンが現れるので、その部分は前述したオッセオインテグレーションの結合が得られます。

いくつかの論文ではそのHAインプラントの剥がれやすさは10年で25%以下という報告があり、身体の中で長期間、バイオインテグレーションの効果を期待できます。

私個人的にはバイオインテグレーションとHAが剥がれたとしてもそこにはオッセオインテグレーションの両方が得られるHAコーティングされているインプラントの方がより、骨に強固に結合すると思います。
さらには、当院ではインプラントの治療計画は、トップダウントリートメントといい、インプラント埋入部位に対して最終補綴物(上のかぶせもの)から考えていきます。

最終補綴物からCT上でインプラント埋入位置をCT上で決定して、CT上で埋入位置を決めてインプラント埋入時に正確に埋入できるように、サージカルプレートという物を作ったりします。

ただしどんなに優れたインプラントでもメンテナンスフリーではありません。

正しい口腔ケアがとても大切です。具体的にはご自宅で行うセルフケアと定期的に歯科医院で行うプロフェッショナルケアです。

インプラント埋入してから、インプラント周囲炎やインプラント粘膜炎にならないようにメインテナンスがとても重要です。

2018年に米国歯周病学会と欧米歯周病学会では、インプラントの単なる炎症だけのことを『インプラント粘膜炎』、インプラント周囲組織の破壊が起るのを『インプラント周囲炎』と定義づけられます。
どちらも、インプラントにとっては避けるべき状態なので、当院では徹底したメインテナンス、さらに咬合力が強い方にはマウスピース作成など行っております。

また当院ではインプラントオペの際に、インプラントを専門としているベテランの口腔外科医と協力して、全身のコントロールと不測の事態に備えることで、安全に治療することができるのでどうぞご安心なさって下さい。

ちなみに骨の中に埋め込むインプラント本体は、今回ご説明した『HAコーティングインプラント』を使用致します。

糖尿病や高血圧、骨粗鬆症などの全身のご病気がある方は、事前にご相談ください。
主治医の先生と連携してインプラントが可能かどうか確認いたします。
また手術中は必要に応じて血圧や酸素飽和濃度などモニタリングしながら行いますのでご安心なさって下さい。

鈴木孝美