ボトックス治療の海外研修に参加

こんにちは、谷村歯科医院 院長の谷村です。

5月25日にグアム大学でボトックス治療の研修と認定医試験がありましたので、参加しに行きました。
この研修は、私が所属していますインディアナ大学日本支部の海外研修プログラムでした。

昨年からコロナ禍による規制も撤廃されて、ようやくコロナ禍前の生活になり海外研修も開催されるようになりました。
私もこの海外研修はコロナ後初となります。
ちなみにコロナ禍前の最後の海外研修もこのインディアナ大学の海外研修(グアム大学で実施)でした。

前回参加したグアム大学で行われた解剖実習の様子

ボトックス治療の『ボトックス』とは実は商品名で、正式にはボツリヌストキシンというボツリヌス菌という細菌が作り出す毒素になります。
これが筋肉を弛緩させて必要以上の緊張が出るのを防いだり、筋肉の運動量が落ちるため結果的に小顔になったりという効果があります。
もちろん安全性については10年以上前から美容外科のメジャーな治療法の一つであり、全世界的にも安全性が確立されております。

歯科でも最近このボトックス治療が行われ始めています。
歯科でボトックス治療をする目的は小顔効果のためではありません。
結果的に小顔効果もありますが、主に必要以上に使われている筋肉を弱めるために使用します。

歯ぎしりや食いしばりといった『ブラキシズム』はセラミックの破折や金属の脱離、歯の破折や全体的な咬耗や知覚過敏、そして歯肉の炎症などの歯周病を引き起こします。
特にせっかくきれいに入れたセラミックが時々ブラキシズムで割れてしまうのを見るたびにがっかりしてしまいます。
ブラキスズムに対してはマウスピースを作成して上と下の歯が直接当たらないようにしますが、それでも欠けてしまったりすることがあります。
またマウスピースは対症療法なので、歯ぎしりの強い力を直接軽減するものでもありません。

しかしボトックス治療であれば噛む筋肉自体をあまり力が入らなくするため、とても体にいいのです。
ちなみに歯ぎしり自体は無理に止めることはしないほうがいいとされています。
体にかかるストレスを分散させて心身を健康に保つために歯ぎしりや食いしばりが行われていると考えられています。
ただ、これも限度を超えると逆に体に悪影響が出てしまいます。
歯ぎしり、食いしばりはいわば患者さんが寝ているときに何時間も噛む筋肉の筋トレを無意識に行こなっているようなものです。
その筋トレの力を小さくしてあげることによって、心身ともに健康な状態を維持できると考えられます。

ブラキシズムに対して具体的にボトックス治療をどのようにするかといえば、基本は咬筋に対する治療になります。
物を噛む『咀嚼』するためには4つの咀嚼筋が使われます。
その中でもメインとなるのが咬筋でボトックス治療ではこの咬筋に注射をします。

その他にも歯科では、笑ったときに上唇が上がりすぎて歯ぐきが見えてしまう『ガミースマイル』の治療や、下唇をすぼめすぎて顎の中心に梅干しのような緊張がでてしまうのを防ぐ治療を行います。

 

前日の夜に実習と試験についてもレクチャーがあります。
会場に到着して驚いたのが、参加者のほとんどが歯科医師ではなく、美容外科医でした。。

まあボトックスの研修ですからそうですよね。
美容外科の先生は今回顔全体のボトックスやヒアルロン酸治療のための解剖実習に参加されていました。

参加している美容外科の先生の半数以上が女医さんでした。
いつものインプラント研修はほとんど男性歯科医師でしたが、今回は30代ぐらいの女性医師が多かったです。

ガミースマイルに対するボトックス治療についても詳しく解説がありました。

 

研修当日です。総勢40名ほどでホテルから観光バスでグアム大学まで移動します。
前回のグアム大学での解剖実習の際は乗用車に5人ずつ乗り込んで移動していましたが、今回は大型バスでの移動でとても快適でした。

グアム大学に到着しました。
グアム大学には医学部と歯学部がないので、生化学教室で実習を行います。

大学に着くと早速実習です。
テーブルにはご献体が2体ずつ準備されていました。

ここで驚いたのが、女性の先生たちは誰も顔色一つ変えずに、淡々と手術着に着替えて実習を始めていました。
当たり前ですが私服だと普通の観光客のようにも見えましたが、みなさん美容外科医ですから慣れているのですね。

 

歯科医師のグループは1つだけでしたが、講師の美容外科の先生がつきっきりで説明をしてくれて、最後にボトックスの治療についての試験がひとりひとり行われました。

 

この日は1日実習でした。
私も歯科に関連する解剖についてチェックして、いろいろなことを学びました。

グアム大学のMoots先生です。
前回来た時のことを覚えていてくださりとても嬉しかったです。

ブラキシズムによるセラミックや歯の破折を防ぐには、いままでマウスピースをしていただく以外、効果的な対処がありませんでした。
しかしボトックス治療をすることで効果は6ヶ月から1年ほどですが、大きな副作用もなく破折を防ぐことができるので(おまけに小顔にもなります)今後はどんどん取り入れたいと思います。