コロナウィルス感染症とインフルエンザと口の中について
こんにちは、歯科医師の鈴木孝美です。
今回は、未だ猛威をふるっているコロナウィルス感染症とインフルエンザとお口の中の話を致します。
口の中の健康が全身の健康につながると言うのは皆様もご存じだと思います。
不健康なお口の中は、口の中の細菌が増加しているだけでなく、菌自体が強くなり、口の中は消化管の一部であり、咽頭(喉の奥)で気道と交わっているために、口腔細菌は呼吸器疾患の罹患や重症化に深く関わっています。
またご高齢の方は、誤嚥性肺炎のリスクが高いことや、新型コロナウィルス感染症やインフルエンザに罹患するとさらに誤嚥性肺炎のリスクが高まりやすいことから、肺炎の予防のための口腔健康管理の意識は近年たかまっています。
近年、沢山の口腔細菌が全身の病気を発生させたり、重症化したりするのか研究が進んでいます。最新の情報を今回はお話致します。
新型コロナウィルス感染症と口腔との関係
世界保健機関(WHO)は2023年5月4日に、新型コロナウィルス感染症に関し「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の終了を宣言して、日本でも同年5月8日に5類感染症へと移行して本格的なWITHコロナ時代となりました。
新型コロナウィルス感染症の病原ウイルスであるSARS-CoV-2は、口の上皮や唾液腺によく住みつき、実際に新型コロナウィルス感染症の患者さんの唾液からは、感染力のあるSARS-CoV-2が検出されているので、口の中はウイルスの全身感染に強く関わっています。
さらに近年微生物をより詳しく解析できることが可能となり、様々な解析結果が得られていて、新型コロナウィルス感染症患者さんの口の中の細菌叢を調べた結果、歯周病関連細菌が口腔や咽頭において増加していること、さらには口腔細菌叢(常に口の中にいる細菌の仲間達)のバランスが乱れていることが分かっています。
さらに研究の結果、歯周病原細菌が肺などの細胞の上についていることで、より、SARS-CoV-2の感染をしやすくしている可能性があります。
オミクロン株については、唾液中や上皮細胞に感染したり吸着したりせずにウイルス単体で存在している可能性が高く、ウイルス単独のためより小さく軽い事から、飛沫が遠くに飛びやすく、エアロゾル感染の原因になっています。
感染を拡大させないためにも、特に高齢者や基礎疾患を持っている方にお会いするときなどは、マスクの着用や換気対策に注意を払う必要があります。
インフルエンザと口腔との関係
口腔環境とインフルエンザの関係性は国内のデータがあり、口腔衛生状態が悪い方ほどインフルエンザの罹患率が高くなっている報告があります。
逆に、毎月の定期検診をしっかり受診して衛生士による口腔管理をしっかりされている方々では、インフルエンザの罹患率がぐっと減っていました。
歯周病原細菌がインフルエンザウイルスを活性化させることも報告されており、口腔細菌はインフルエンザウイルス感染を促進や重症化させる可能性が高いため、健康な口腔環境の維持はインフルエンザ予防対策のひとつになります。
このように健康なお口の中の管理が新たな感染症予防になることは確実です。
歯科医師と医師ともに、今色々な学会でお口の中の健康管理の重要性を話しています。
ウイルスに負けないように是非とも定期検診を受診するようにお願い致します。