睡眠と口腔顔面痛
こんにちは、口腔外科医の鈴木孝美です。
今回は、『睡眠と歯や顎の痛みが関係している』というお話をします。
睡眠が順調でないと、様々な原因により人の健康に影響を与える可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群などの睡眠関連の呼吸障害は、心血管疾患や高血圧のリスクを高める可能性があり、糖尿病にかかりやすくなったりします。筋肉や骨は睡眠不足に対してとても弱く、関節リウマチ、腰痛、顎関節症などを発症している患者さんの90%が睡眠不足だったとの論文もあります。
口腔顔面痛領域では、睡眠障害が咬む筋肉の痛みや頭痛を引き起こす可能性があります。
睡眠の定義と私達が眠る実際の理由は、人生の謎の1つであり続けています。その謎を考えてみましょう。
基本的な睡眠は、非急速眼球運動睡眠(ノンレム睡眠)と急速眼球運動睡眠(レム睡眠)に分類され、人間はこのノンレム睡眠とレム睡眠を交互に発生して、眠っています。
ノンレム睡眠は、総睡眠時間の80%を占めてほとんどの体と脳はここで回復します。
レム睡眠はほどんどの夢がこの状態で発生するため、夢睡眠とも呼ばれます。
レム睡眠は、脳の活動状態が覚醒状態と類似しています。しかし脳は活動しているが、筋肉の麻痺があるために、睡眠中に夢を行動できない仕組みとなっています。
口腔顔面痛に関連する最も一般的な睡眠障害は次の3つです。
① 不眠症
② 無呼吸症候群
③ 歯ぎしり
この中で今回は③の『歯ぎしり』についてお話致します。
歯ぎしりの定義は、『歯の食いしばりまたは研削、および下顎骨のブレースと突き刺しを特徴とする咀嚼筋活動』です。
睡眠中に歯ぎしりが起こると、日中の歯ぎしりとは違って、顎関節症を引き起こす可能性があると言われています。
睡眠中の位置に関しては、歯ぎしりの74%が仰臥位(仰向け)で、側方位は23%であることが分かっています。
睡眠中の歯ぎしりは、歯と歯に詰めた人工的な修復物を壊したり取れたりすることがあるため、歯ぎしりをしても歯と歯がぶつからないようにする必要があります。
歯を保護するには一般的に歯にかぶせる『マウスピース』があります。
このマウスピースですが、上の歯にカバーをします。ただしあまりにも歯ぎしりが強度で、下の歯にダメージが行く場合は下の歯にもマウスピースを装着します。
更にマウスピースの素材ですが、ペットボトルのように硬いハードタイプとシリコンのように柔らかいソフトタイプがあります。
歯ぎしりは、自分の歯やつめ物やかぶせ物を摩耗させたり壊したりする危険があり、歯以外にも顎の痛みや引っ掛かり(顎関節症)を引き起こします。
これらをしっかりと防ぐには、ハードタイプのマウスピースが必要です。
ソフトタイプのマウスピースは一見楽そうに見えますが、厚みがハードタイプより厚く、強い歯ぎしり食いしばりでちぎれたり、噛むと動いて顎関節に痛みが出てくることがあります。
そのため当院でお作りするマウスピースはハードタイプになります。
現代人の日常生活は、十分な睡眠をもたらさないことが多いです。
多くは睡眠障害に関連しており、良い睡眠を得るのが必要になっております。
よりよい睡眠を得るには次の10の項目があげられます。
① 平日と終末の両方で定期的な起床時間を維持する。
② ベッドでの過度の時間を避ける。
③ 交代制で働く場合を除いて昼寝を避ける
④ 就寝前に食べ物、カフェイン、アルコールを避ける
⑤ 夕方ではなく一日の早い時間に定期的に運動する。
⑥ 就寝前にリラックスできる何かをしてみる
⑦ 睡眠が困難な場合は時計を見ないようにする
⑧ お腹が空いたら寝る前には軽食を食べるだけにする
⑨ 寝る前に心配しないようにする。
⑩ 寝る前にはお風呂に入って、眠りにつく時間をゆったり迎える。
健康を保つために、歯の具合も良好でないと不便です。
当院では虫歯や歯周病とともに歯ぎしり・食いしばりのある患者様には治療が一段落した段階でマウスピースをお作りしていますので、安心してお任せ下さい。
お口の中の健康は全身の健康に繋がります。
歯科医師 鈴木孝美