飲んだ薬はどのようにして体の中で働くのか?

こんにちは、歯科医師の鈴木です。

今回は、飲んだお薬がどんな風に身体の中で働くのかをお話したいと思います。

 

薬を説明するには、難しい言葉ですが大きく二つに分けて

薬物動態PHAMACOKINETICS

薬力学PHARMACODYNAMICSとがあります。

今回は薬物動態についてお話致します。

 

薬物動態は薬の体の内での移動=代謝を意味します。
① 薬を飲む
② 血液への薬の吸収
③ 血液から効かせたい臓器への薬の移動
④ 薬の身体の外への排泄
以上の話を中心に説明します。

 

薬物動態 PHAMACOKINETICS

お口から飲むお薬は、ほとんど十二指腸で吸収されます。

十二指腸は胃よりも酸性度が低いからです。

そして薬は肝臓から出ている代謝酵素によって代謝されます。
薬物代謝の主な目的は、肝臓で薬物をより溶性(水に溶けやすい性質)の高い形に変換し、腎臓、肺、胆汁、皮膚、便に排泄されやすくすることです。
肝臓は薬を代謝する重要な臓器であり、薬は主に大規模なシトクロムPー450(CYP)スーパーファミリー酵素によりほとんどの薬物はCYPによる生体内変換を受けます。

吸収されなかった物質は血漿中に残り、最終的に腎臓を通過して尿中に排泄されることになります。

 

薬の飲むとどのように血液中に薬が漂うかを示す表があります。

それを血中濃度曲線といいます。

 

血中濃度曲線
• 血液中の薬の時間経過は山型曲線を描く。

多くの薬は血液中の濃度が一定以上になると効き目が現れ、それ以下になると効き目が消えていきます。

• この血中濃度曲線は、その薬がどのくらいの時間で効き目を現し、いつまでそれが続くかなど薬の体内での行動を表します。

• グラフの1番高いところが最高血中濃度(CMAX)、そこに到達するまでの時間(TMAX)は、薬の効き目のスピードを知る目安になります。

• CMAXの半分に減るまでの時間が半減期(T1/2)で、半減期が長いほど薬は体の中に長く留まり、効き目が続きます。

• 濃度曲線の下の面積をAUCといい、これが大きいほど体の中で薬がたくさん利用された(=バイオアベイラビリティが高い)と判断できます。

 

 

では、次に連続して飲む抗生物質などを考えてみましょう。

薬を連続して飲むと、定常状態という薬に効果が出ている状態を考えてみます。

定常状態 (STEADY STATE)
薬が血中に入ってくる量と出ていく量が等しくなる状態
定常状態とは、薬を一定時間ごとに繰り返し投与する時、特に抗生物質があげられますが、身体の中で薬が効いている、有効域に達している状態を意味します。。

下の図はバンコマイシンという抗生物質を飲んだときの曲線です。

連続して飲む必要がありますが、なぜ一日三回毎食後飲まないといけないかというと、薬の有効域という薬がやっと効き出す領域にたどり着くまでには、最低4回目から5回目の服用で、やっと薬が効いてきているという事が分かります。

なので、連続して飲まないといけない薬は必ず用法を守って連続して飲んでいく必要があります。

 

 

今度は薬物排泄について考えてみましょう。
薬が体から排出される時間は薬を飲むのをやめたら、すぐに身体の中に薬がなくなるわけではないのです。
薬は連続で飲むのをやめると血液中の薬の濃度は半分になり、徐々に時間をかけて身体から薬の量が減っていき、時間がかかるのです。

 

このように薬の連続服用をやめても、薬の種類によっては、身体の中にまだ残っている薬もあります。

歯科でよく使う抗生物質は、この身体の中で残っている分も含めて3日間から4日間ときめております。
人間の身体は非常に複雑で、すごく精密にできていて、研究が進むとこのような複雑な代謝も解明されています。

 

複雑な薬の身体での代謝や分解を理解して、薬を処方しています。
ダイナミックな人間の身体はとても勉強していて面白いです。また論文などを拝読しましたら皆さまにお知らせいたします。

歯科・口腔外科医 鈴木孝美