TACsという頭痛と歯の痛み
こんにちは、歯科医師の鈴木です。
今回は私が所属している日本口腔顔面痛学会で取り扱っている頭痛が、歯の痛みとして現れる場合をお話します。
上のパンフレットは日本口腔顔面痛学会が推奨しているポスターです。
歯が原因でないのに頭痛のために歯の痛みが起こる場合があり、その場合は歯の痛みが全身の病気のサインとなっています。
今回は以前にもブログに書かせていただいた、歯が原因でない痛み(非歯原性疼痛)のお話をしたいと思います。
1 非歯原性歯痛とは?
非歯原性疼痛とは、歯や歯周組織に異常がないのにも関わらず歯に痛みを感じる状態のことであります。
一口に非歯原性疼痛と言っても、さまざまな種類があります。
① 筋.筋膜性歯痛
② 神経障害歯痛
③ 神経血管性歯痛
④ 上顎洞炎歯痛
⑤ 心臓性歯痛
⑥ 精神疾患または心理社会的要因による歯痛
⑦ 特発性歯痛
⑧ その他の様々な疾患による歯痛
に分かれます。
今回お話しするのは③神経血管性歯痛です。
この単元は=頭痛となります。
脳の中の血管の一時的な炎症により頭痛が生じると、歯の神経である脳神経の一つの三叉神経という神経も興奮して、頭痛と同時に歯痛が生じるのです。
この神経血管性歯痛にはさらに種類があります。
① 片頭痛
② 緊張型頭痛
③ 三叉神経自律神経性頭痛(TACs)
今回は上記3つのうち、③三叉神経自律神経性頭痛(TACs)の話をします。
2 三叉神経自律神経性頭痛(TAC)とは?
TACとはTrigeminal Autonomic Cephalagiaの略です。
この病名を和訳すると、三叉神経自律神経性頭痛といいます。
この頭痛の病態は、
① 一片側性の頭痛、左か右どちらかの頭痛
② 頭痛と同じ側の頭部副交感神経系の自律神経症状を伴う
といった症状です。
例えば、頭痛と同じ側の目が充血して赤くなったり、涙が出たり、鼻が詰まったり、鼻水がでたりという症状があります。
この二つの症状は共通してあり、種類は四種類あります。
① 群発頭痛(CH)
② 発作性片側頭痛(PH)
③ 短時間持続性片側神経痛様頭痛発作(SUNHA)
④ 持続性片側頭痛(HC)
上記の図のように4つの頭痛により、痛みが歯の方向にいくのがわかります。
このように歯が痛くなってくるので、歯が虫歯などの原因でないにも関わらず歯科を受診する事が多くなるのです。(上記の右端のMIGRAINEとは片頭痛の事です)
では、この4つの種類のTACsのそれぞれの特徴を話していきたいと思います。
① 群発頭痛
ある一定の期間のみ頭痛があり、何も症状がない時期もあります。
この頭痛は同じ季節や同じ時間に頭痛が起こるのも特徴です。
飲酒で発作が誘発されます。
男性に多いとされています。
頭痛の起こる時間が15分から180分です。
痛みは上の歯の痛みが出るので注意が必要です。
② 発作性片側頭痛と④ 持続性片側頭痛
やや女性に多く30代に多く見られます。
頭痛の起こる時間は平均17分です。
この2つの頭痛にはインドメタシンという鎮痛剤が効くのが特徴です。
頭痛が起きると激痛であるため、顔を手で覆うような仕草をするのであたかも歯が痛くて苦しんでいるように見えます。
③ 短時間持続性片側神経痛様頭痛発作
頭痛の起こる時間は数秒で電撃様の痛みを感じるこの頭痛はとても稀な頭痛ですが、一番最初にお話しした頭痛と同じ側の目や鼻の症状が沢山出るのが特徴です。
電撃様の痛みのため、三叉神経痛という病気と似ているため鑑別しなくてはいけないです。
以上が三叉神経自律神経性頭痛(TACs)に関する痛みになります。
いずれの頭痛も歯の痛みとして出ることが多いので、私達歯科医師はレントゲンや様々な道具を使い歯が原因でない痛みの場合はすごく注意しながら診療しています。
最近では神経内科のお医者さんや脳神経内科、外科のお医者さんと一緒に合同で行う学会の勉強会も増えています。
歯の痛みは単に歯の痛みではなく全身の病気のサインとなっているため、我々歯科医師も日々勉強をして必要のない治療をしないように努力しております。
これを読んだ皆さまは、とりあえず歯が痛いなら、歯科医院に受診して下さい。
それから必要に応じて様々な検査をして、医師の先生と連携して痛みを無くす努力を致しますので安心して歯科に受診して下さい。
鈴木 孝美