帯状疱疹と歯の痛み

こんにちは、歯科医師の鈴木です。今回は、『帯状疱疹と歯の痛み』についてお話ししたいと思います。

1 帯状疱疹とは?

帯状疱疹は水痘(みずぼうそう)と同じ、「水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV)」によって生じる感染症です。
このウイルスに初めて感染した場合は、ウイルスは口の中から侵入して水痘(みずぼうそう)を皮膚や粘膜に作ります。

これがいわゆるみずぼうそうの水疱です。

しかしこのウイルスは、この水疱を作っている間に水疱を作っている皮膚や粘膜の神経細胞の中に入り込みもっとその神経の奥に入り込んでそこにひっそりと住みつき、水痘の治療が終わっても一生そこに住みつくのです。

2 帯状疱疹のお口の症状

帯状疱疹はそこに住みついたウイルスが身体の疲労や加齢などで抵抗力が弱まったときに、再活性化して生じる感染、いわゆる再帰感染、回帰感染で生じる病気です。
問題は、歯の神経を司る『三叉神経』という神経の中にもよく住みつくので、再活性化したときに口の中や、歯の痛みとして症状がでる場合があります。
歯の神経に再活性化した場合の一般的な前触れの症状として、右か左、どちらか一方の口の中や歯のチクチク、キリキリとした痛みや感覚の変化が出ます。

その後数日~一週間ほどして同じ側の皮膚や粘膜に小さな水疱が出てもっと大きくなりかさぶたになります。通常痛みが発生してかさぶたに治るまでに3週間~一ヶ月かかります。

帯状疱疹が歯の痛みとして発現した場合は、最初の頃は眠れないほどの痛みで、虫歯の痛みと間違える可能性があります。

ただ、帯状疱疹が原因での歯の痛みは、一週間で自然に治るのでこれは特徴だと思います。

付け加えるなら口の中の粘膜にできる帯状疱疹は水疱を作らない場合が多く、すごくこれぞ水痘だ!と見分けがつかない場合が多いので、皮膚にできる場合と見分けるのがとても難しいです。
私たち歯科医師は、もちろんレントゲンや検査によりこの歯が虫歯かはしっかりと診断できますので、全く虫歯や歯周病でないのに、眠れないほど歯が痛い帯状疱疹時の歯の痛みは必ず鑑別診断できますのでご安心下さい。
キーワードは、最初は眠れないほどの痛みが一週間で何もしなくてもなくなるのが帯状疱疹の歯の痛みです。
このように、全身の病気である帯状疱疹が歯の痛みとして出る場合があり、歯は全身の一つであります。

虫歯や歯周病も進行が進むと虫歯菌や歯周病菌が歯の血管から全身を回り、全身の病気と繋がることが場合があるので、お口の中のケアは健康を維持するためにも必須です。

3 帯状疱疹の予防は?

帯状疱疹には予防ワクチンがあります。今は50才以上ならワクチン接種ができますので、帯状疱疹に子供のころかかったことがない方など是非接種をお勧めします。
今は赤ちゃんのうちにみずぼうそうの予防接種を受けるので、子供の頃にみずぼうそうを患うお子さんが極めて少なくなり、周りにみずぼうそうになった家族がいないため、帯状疱疹への抗体ができていない場合が多いのです。

歯を司る三叉神経という神経は脳神経の一つであり、非常に複雑な場所にあり、顔の筋肉を司る顔面神経と近く、顔面神経に帯状疱疹ウイルスが感染すると顔面神経麻痺を生じます。

テレビのニュースで、以前の横浜市長の林市長が帯状疱疹からの顔面神経麻痺を患ったというのも聞いたことがありますので、これを読んで下さった方は是非接種してみてください。


歯科医師 鈴木孝美