歯が痛いときの問診について
こんにちは、歯科医師の鈴木です。今回は歯の痛みがあった時の最新の問診の仕方についてお話します。
歯の痛みはつらいですよね。少しの痛みならともかく、ズキズキと脈打つ痛みだったり、脳に響くような痛みだと仕事や勉強にかなり影響してしまいます。自動車を運転していたら集中力が途切れて事故を起こすかもしれません。
そんな時は少しでも早く歯を削ってもらったり、もう歯を抜いてほしい~!って思うかもしれません。でもちょっとお待ち下さい。もしも歯が痛くても、必ずしも歯が原因で歯が痛い訳ではないかもしれません!
歯が痛いとのことで歯を削ったり神経を抜いたり抜歯をしても痛みが取れない場合があります。つまり痛みの原因が歯でなかった可能性があります。
そのようなことにならないように、歯科医院では頭の付近や全身疾患まで鑑別診断に含めた包括的な問診を行うことが大切です。
当院では、問診して本当に歯から来る痛みなのかよく診査診断をしてから治療にあたっております。
このような包括的な問診を『痛みの構造化問診』、難しく言えば『仮説演繹法』とよばれるのですが、いかにどのように問診を行うか説明していきます。
① 部位 痛む場所はどこですか?
② 発現状況 痛みが始まるきっかけとなったことがありますか?
③ 経過 今までたどった経過は、痛み始めてからどれくらいですか?
④ 痛みの質 どのような種類の痛みですか?
⑤ 痛みの程度 痛みの強さはどのくらいですか?
⑥ 頻度 どのくらいの頻度で起こりますか?
⑦ 持続時間 一回の痛みはどのくらい続きますか?
⑧ 時間的特徴 痛みの変化の時間的特徴はありますか?
⑨ 増悪因子 痛みを生じさせたり、悪化させることはありますか?
⑩ 緩解因子 痛みを軽くできることはありますか?
⑪ 随伴症状 痛いときに他に一緒に生じる特徴はありますか?
⑫ 疼痛時行動 痛みのときに決まって行動することはありますか?
以上の12項目を問診して、痛みの特徴から必要な鑑別診断を行い、最終的な診断をつけることが大切です。
歯の痛みがもしかしたら大きな病気の一因になっていることもあります。
歯の神経は頭の神経に繋がっている神経の一つです。頭の神経は12あるのですが、その1つが歯の神経なので脳の中や耳のあたりなど頭に関する所に腫瘍ができたりしても、歯の神経を圧迫して歯の痛みとして危険の信号を出してることもあります。
そのような場合も考えて、他の12の神経が正常か診るのはとても大切になります、
この12の脳神経検査のやり方を説明致します。
12脳神経検査
① 第一脳神経 嗅神経 嗅覚を検査するので鼻腔でコーヒーなどを匂いが嗅ぐことができるか検査する。
② 第二脳神経 視神経 視野を検査する。患者さんの視野がどこまで見えるか検査する。
③ 第三・四・六脳神経 目の運動を検査する。
④ 第五脳神経 目の神経、上の歯の神経、下の歯の神経が含まれており、どこかが鈍くなってないか精密触覚機能検査などを用いて検査する。咬む筋肉の衰えがあるかも見る。
⑤ 第七脳神経 顔面神経 額のしわ寄せ、目を閉じれるか、口角を上げられるか検査する。味覚も検査する。
⑥ 第八脳神経 内耳神経 聴覚の検査を行う。
⑦ 第九・十脳神経 舌咽神経、迷走神経 咽頭部の運動を検査する。舌を圧迫して口蓋垂の偏位があるか診る。
⑧ 第十一脳神経 副神経 肩の筋肉や首の筋肉の衰えがないか検査する。
⑨ 第十二脳神経 舌下神経 舌の運動を検査する。舌を前にしたりして正常か検査する。
これだけの神経が頭の中には複雑に絡み合っています。頭の痛み、歯の痛みもそうですが、この12脳神経が絡み合って起こりますので、痛みの原因がどこかを精密に検査していきます。検査にはレントゲンやCT、MRI(大学病院で行います)を撮るのも必須です。
歯の痛みは大きな病気のシグナルになっていることもありますので、我々歯科医師は常に注意して診療しています。大学病院や医科の先生と連携しながら最善を尽くして治療していますので、ぜひどこが痛いか、いつからの痛みか詳しく教えていただけたら幸いです。
痛みの原因を知ることで、治療計画を立てていきますので、お気軽にお申し付け下さい。
また、不快な違和感も教えていただけたら幸いです。
スタッフ一同一丸となって適切に行っていきます。
歯科医師 鈴木孝美