歯の痛みのメカニズム

こんにちは。歯科医師の鈴木です。

 
今回は、『歯が痛むメカニズム』 についてお話させて頂きます。

下の図は歯の断面図と組織図です。

歯は硬いエナメル質に囲まれて、その内側は象牙質、更にその内側には神経や血管が混ざった歯髄で構成されています。

また、歯を支えている骨と歯の間には歯根膜といわれる繊維があり、歯が直接骨とくっついているのではなく、この歯根膜という繊維を介して歯の根が骨と付いています。


エナメル質は、硬い組織です。

このエナメル質には、神経はありません。

だから、歯は硬い組織で熱い物や冷たい物、硬い物でも食事が出来ます。
しかしエナメル質以外には全て神経の末端があります。
つまり、神経の末端があるのは、象牙質、歯の中の血管や神経(歯髄)、歯根膜や歯茎です。
ここに細菌が感染したり傷ついたりする(侵害刺激)と、神経の末端は脳に、『痛み』として伝わります。
その神経の末端のことを自由神経終末といいます。

この自由神経終末が痛みを受ける受容器で侵害受容器です。

下の図は刺激が加わると脳に痛みとして伝わる図を示しています。

痛み刺激は自由神経終末から背中の脊椎に伝わり、最後は脳の大脳辺縁系で感知され、脳で初めて 「痛い!」と感じます。

痛みを伝える神経自由神経終末には、2種類の神経線維があります。

①Aδ繊維
 鋭く早い痛みを伝えています。

この痛みは一過性のもの、ズキンとくる痛みの種類です。
食事の際でも繰り返し噛むと、ズキンズキンと連続した痛みになります。

②C繊維
 鈍く遅い痛みを伝えています。じわじわと痛むという種類の痛みです。

よく歯の痛みで、『ズキン』ときて、あとから『じわーっ』とくる痛みを感じたご経験がある方もいらっしゃると思いますが、それは一番最初Aδ繊維により脳へ痛みが伝わり、その後遅れてC繊維によりじわじわといった違う痛みの種類が脳へと伝わっているというメカニズムなのです。

象牙質の痛み
 象牙質には、Aδ繊維が多くあり鋭い痛みとして脳に伝わっています。

歯の中の神経と血管(歯髄)
 歯髄にはC繊維が多くあり、じわじわとした痛みとして脳に伝わっています。

この歯髄は硬い歯の中にあるためとても閉鎖的であり、この歯髄のC繊維は極めて敏感である特徴があります。

歯根膜の痛み
 ここにはAδ繊維とC繊維両方が介在して早い痛みと遅い痛みを複雑に伝えて、また両方が誘発しあい、患者様にはとても辛い痛みとなっています。
ここの痛みは歯を噛み合わせたり、叩いたりすると感じる鋭いAδ繊維の痛みと、ここの歯根膜に病気が伝わるとじわじわと感じるC繊維の痛みがあります。

このように末端の神経には2種類あり、歯の痛みがズキンときたり、じわじわと遅く感じたりします。
私たち歯科医師はこのような痛みのメカニズムを考えながら、日々どこが痛みの原因なのかをレントゲン写真や、お口の中を拝見して様々な病気の様子から原因を突き止めています。
歯の痛みのメカニズムと照らし合わせながら、その痛みの原因は歯であるのかそれとも歯ではないのかなど、全身の状態も考えながら診察していきます。


なお、歯が原因ではないのに歯が痛くなるお話は以前のブログに記載させて頂いていますので参考にされて頂けると幸いです。

『非歯原性疼痛』について

歯科医師 鈴木孝美