歯の応急処置
こんにちは、谷村歯科医院 院長の谷村です。
皆さま、先日の台風19号による被害は大丈夫だったでしょうか?
今回は、事故や天災などで歯が怪我をしたり、夜中や旅行中で歯科医院に行くことができないときの 『歯の応急処置』 を説明いたします。
1 歯が痛くなった
歯が痛い場合、痛い歯は特定できますか?
まずは痛い歯の周りの食べかすを取り除きます。
歯と歯の間に歯ベカスが挟まり、歯肉が腫れてくることがあります。
その際はデンタルフロス(糸楊枝)や歯間ブラシがあればそれを使用しますが、なければ爪楊枝を使用します。
通常は爪楊枝は歯茎を傷つけるので使用しないほうがいいのですが、緊急事態なのでやむをえないでしょう。
穴が開いていれば、そっと詰まっているものを取り除きます。
その後は患部を軽く冷やします。ただ、冷やしすぎには注意します。
お風呂に入るのは避けてシャワー程度にして、市販の痛み止めを服用するのもいいでしょう。
また明らかに虫歯で穴が開いている場合は、正露丸をつめるのも効果的です。
その際痛みが逆に増す場合は神経が腐ってしまい圧力が高まっている状態なので、取り除いたほうがいいでしょう。
痛みが一時的に治まっても、決して治ったわけではないので、できるだけ速やかに歯科医院を受診しましょう。
2 詰め物や差し歯が取れた
詰め物がはずれた場合は、しみるようになるかもしれません。
残っている部分が割れる可能性があるので、できるだけ反対側の歯で噛むようにして、硬いものや強く噛む必要なものは避けましょう。
差し歯が取れたときも同様に、反対側に歯で噛むようにしましょう。
前歯など見た目が困る場合は、応急処置として瞬間接着剤を塗るとすぐにくっつきます。
その際は歯やかぶせ物をきれいにして、接着剤は部分的に少しだけつけるようにします。
ポタっと1滴たらすのは多すぎです。液がはみだして唇がくっついて大変なことになりますので、付ける際は細心の注意を払ってください。
3 詰め物や差し歯を飲み込んだ
万が一飲み込んでも、通常は2日以内に排出されます。
しかしせきが止まらなくなったり、体調が悪い場合は速やかに総合病院を受診して精密検査を受けてください。
体調がすごく悪くなった場合は救急車を呼びましょう。
細菌感染を起こしたり、異物が気管や肺に入ってしまった可能性があります。
4 歯が抜けた
歯が抜けた場合はすぐに抜けた歯を持って来院してください。その際は入れ物に牛乳を入れてその中に入れるか、牛乳がなかったらできるだけ乾燥させないようにして持ってきてください。
抜けた際に注意することは、抜けた歯をごしごし洗ったり消毒してはいけません。
歯の根の表面には 『セメント質』 という薄い層と、『歯根膜』 という繊維成分があり、これらが歯とあごの骨をつなげています。
しかしこれらが喪失してしまうと、歯がくっつかなくなってしまうのです。
なお歯を戻してくっついたとしても、歯の中の神経が死んでしまうことが多いです。
そのため、後日歯を削って歯の中の神経を取り除いたりかぶせる必要が出てきます。
5 歯が折れた、ぐらぐらする
歯が折れた場合で神経のない歯であれが激痛は起きない場合がありますが、神経のある歯の場合は、歯の中の神経が露出してしまうことがあります。
歯の中には 『歯髄』 といって神経以外にも毛細血管もあるため出血してきます。
また神経が露出することによって触れると電流が走るぐらい痛くなります。
この場合もガーゼかティシュで患部を押さえて速やかに歯科医院を受診してください。
歯がぐらぐらする場合も差し歯が取れそうか、歯周病でぐらぐらするのか、外傷で抜けそうかによって処置は異なりますが、できるだけ安静にして触らないようにしてください。
6 口の中を切った
口の中を切ってしまった場合は、ガーゼかティッシュで30分ほど圧迫止血をしてください。
口の中は唾液が出てくるので、混ざると出血がすごく多く感じることがあります。
まずはあわてずに止血をして、強いうがいは避けてください。
ただし血が脈打つようにドクドクと出てくる場合は、歯科医院を受診しようとせずにすぐに救急車を呼んでください。
内出血を伴うと気道を閉塞させて死にいたる場合もあるのでとても危険です。