入れ歯にはどのような種類があるのか?
こんにちは、谷村歯科医院 院長の谷村です。
80歳で20本以上の歯を残そうという、『8020運動』があります。
歯が20本残っていれば、それほど不自由なく食事をすることができます。
しかしながら、75歳以上の人の平均残存歯数は、まだ10本程度となっています。
親知らずを除いて28本ある歯の半分以上が無くなると、まともに噛むことが難しくなってきます。
さらに残っている歯も歯周病でぐらぐらだったりするので、さらに噛みにくい状態が多いです。
そこで必要となってくるものが、『入れ歯』になります。
現在では入れ歯の代わりに『インプラント』という選択肢もありますが、10本以上ともなると費用面でも高額になるため、まだまだ入れ歯が主流となっています。
今回は、この『入れ歯』にはどんな種類があるのか説明をしていきます。
1 部分入れ歯
上もしくは下の歯が1本でも残っている場合に使用する入れ歯です。
入れ歯は、歯の部分(人工歯)と歯ぐきの部分(義歯床)からできています。
さらに、それを口の中で安定たさるためのバネ(クラスプ)がついています。
それ以外にも左右の床やクラスプをつなぐ金属の部分(バー、プレート)や、入れ歯がくいこまないようにするストッパー(レスト)がついています。
このように部分入れ歯の構造は、非常に複雑で精密な作業を要します。
さらに部分入れ歯は健康保険でできる『保険の入れ歯』と、より快適で見た目もよく長持ちしてアレルギーが少ないなどもメリットがある『自費の入れ歯』があります。
①保険の部分入れ歯
保険の入れ歯は安価で作れるのがメリットです。
基本構造は、プラスチックでできた人工歯、ピンクの硬いプラスチックの床、金属のクラスプ、ほかにレストやバーからできています。
しかし、入れ歯に使用することのできる材質が決められています。
そのため、金具が目立つ・安定性が悪い・すぐ緩くなる・痛みが出やすい・大きくて気持ち悪くなる・金属アレルギーが出る・歯がすり減る・支えている歯が虫歯になる・ぐらぐらして抜ける・バネが折れる・床が割れる、などのデメリットがあります。
②自費の部分入れ歯
自費の入れ歯は保険の入れ歯のデメリットが改善されているのでとても快適です。
自費の入れ歯の種類は、大きく分けて二つあります。
1つ目は義歯床に薄くて硬い金属を使用した、『金属床義歯』です。
金属は50年以上の実績のあるコバルトクロム合金や金合金のほかに、とても軽くて金属アレルギーも少ないチタン合金があります。
金属を使用するメリットは、入れ歯の内側が薄くて丈夫になることです。
入れ歯に金属を使用したからと言って、外側からは金属部はほとんど見えませんのでご安心ください。
また入れ歯を支えるために、磁石や特殊な金具を歯に取り付けることもあります。
2つ目は金属を使用しない、『ノンクラスプ義歯』です。
このノンクラスプ義歯は、床やレスト・クラスプなど通常金属が必要なところもすべて歯ぐきと同じピンク色でできた入れ歯です。
ノンクラスプ義歯の特徴は、なんといっても目立たないということです。
また残っている歯に直接バネをかけず歯ぐきをはさんで義歯を安定させるので、残っている歯にやさしい入れ歯になります。
さらにノンクラスプ義歯は弾力があるので、壊れにくく痛みも出にくいです。
ノンクラスプの材質にはいろいろ種類があり、それぞれ一長一短です。
柔らかくて快適だけど修理ができないもの・硬いけれど修理ができるもの・少し柔らかくて技工所でなら修理ができるもの、などがあります。
2 総入れ歯
上もしくは下の歯がまったくない状態や、歯の根だけしかない場合に使用する入れ歯です。
入れ歯を支える歯がないので上の入れ歯は落ちてこないようにぴったりと歯ぐきに密着させ、吸盤効果で安定させています。
下の入れ歯は上とは違って面積が少なく骨も出っ張っています。
そのため落ちてくることがない代わりに、痛みが出やすいです。
総入れ歯も部分入れ歯と同じように、『保険の入れ歯』と『自費の入れ歯』があります。
①保険の総入れ歯
保険の総入れ歯は、『保険の部分入れ歯』と同じ材質になります。
プラスチックでできた人工歯と、ピンクの硬いプラスチックの床でできています。
保険のメリットはやはり安価でできるということです。
ただし保険の入れ歯はとても分厚く、違和感が強いです。
また食べ物の温度が感じられないため、食事がおいしくなかったり熱いものが分からずのどをやけどしてしまうこともあります。
②自費の総義歯
自費の総義歯は、『金属床義歯』が主なものになります。
ノンクラスプ義歯と同じ材質を用いた総入れ歯もありますが、メリットがあまりありません。
ただし下の総入れ歯で痛みが出やすい場合は、柔らかい材質で作ると快適になります。
金属の総入れ歯だと、とても大きなメリットがあります。
一番のメリットは、床の厚みをとても薄くできることです。
そのため違和感が少なく、発音もしやすく食べ物の温度も感じることができます。
様々な入れ歯の模型 左奥・磁石のついた部分入れ歯 右奥・ノンクラスプ義歯 手前・総入れ歯の保険と金属床義歯の比較
3 入れ歯の寿命は?
どんな入れ歯でも作れば一生そのまま使えるわけではありません。
なぜなら、入れ歯は変わりがなくても、歯ぐきや骨の形が年々変化していくからです。
また部分入れ歯だと、残っていた歯が抜けてしまったら、入れ歯を修理するか新しく作り直す必要があります。
入れ歯が合わなくなった場合は、やはり歯科医院で適切に修理や作り直しが必要です。
定期検診でこまめにチェックしていれば、大ごとにならずに済む場合もあります。
不具合を感じたらあまり無理をせず、早めに歯科医院でチェックしてもらいましょう。