親知らずについて
「親知らずは抜いた方がいいですか?」という質問を受けます。
親知らず(智歯)は最後に生えてくるので生えるための必要なスペースが不足して、顎骨の中に埋まったまま(埋伏状態)になっていたり、手前の歯に引っかかって斜め方向を向いていたりする事が多いのです。
智歯が一部分だけ顔を覗かせているような場合、大変磨きにくく汚れが溜まりやすい為、虫歯になり易く、また炎症を起こし易いと言えます。
痛みが出るような場合は当然抜いた方が良いでしょう。
また、全く無症状の智歯であっても、将来隣の歯に影響を及ぼす可能性のあるものは抜歯しておいた方が良いと思われます。
次によく受ける質問は「抜くのは大変ですか?」というものです。
これは生え方や位置、年齢などによりかなり差異があります。
けれども一般的に下顎の智歯抜歯は大変な事が多いようです。
埋伏状態の智歯の場合、歯が埋まってるいる周囲の骨を削ったり歯をいくつかに分割しないと出て来ません。
お口の中の一番奥歯の更に奥の狭い見えにくい場所でこの操作をするのですから、困難であると言えるでしょう。
では、真っ直ぐに生えた智歯に関しては容易かというと、そうではない場合が往々にしてあります。
これは智歯全般に言えることなのですが、以下ような所見がしばしば見られるからです。
①歯根の形態が不正
歯根の先端が肥大していたり、彎曲して骨に噛み込んでいたりすれば、物理的に引っかかって抜けにくいのです。
下の一番奥が智歯です。手前の他の歯は先細りですが、智歯は先端が太い(肥大)です。
下の一番奥の智歯は、先端が曲がって2本の歯根でほねをグッと噛み込んでいます。
②歯根膜の萎縮や骨との癒着
レントゲン上で歯と骨との境界がハッキリしていなければ、境い目を削ってはがさないと骨から歯を取り出すことができません。
咬み合わせに使えない智歯のように咬合負担のかかっていなかった歯にはこのような所見が多々見られます。特に中年以降になると多くなります。
下の一番奥の智歯は境界がぼやけてハッキリ見えません。手前の歯に比べると顕著です。骨癒着が疑われます。また、歯根肥大も見られます。
こちらも同様です。
先程、一般的には下顎の智歯抜歯は大変な事が多い、と述べました。では上顎の智歯についてはどうでしょうか。
上顎は下顎に比べると骨質が軟らかく、また骨に弾性があるので、物理的に引っかかっているような場合でも比較的すんなり抜歯可能なことが多いです。けれど一方では抜歯に際してきわめて視野が狭く抜歯操作がやりにくいので、骨の削去や歯の分割が必要となるような場合には、かえって下顎の智歯抜歯よりも困難になることもあります。
上顎の智歯は完全に骨の中に埋伏しています。ひとつ手前の歯根の先辺りに智歯の頭があり、引っかかっています。このような抜歯は大変困難です。
以上のように、智歯の抜歯が大変かどうかは歯の状態によってかなり差異があり一概には言いきれません。
抜歯をした方が良い歯でも、抜歯に伴う様々なリスクが高いような場合は、抜歯を避けた方が有益であることもあります。
ご相談いただくのが一番良いかと思います。
気になった方は当院スタッフまで是非ご相談下さい!
藤田