ホルモンバランスと歯周病の関係
こんにちは、谷村歯科医院の谷村です。
今回は、『ホルモンバランスと歯周病』です。
歯周病は体のホルモンバランスが崩れたときに悪化しやすいです。
これはどういうことなのか解説していきます。
1 歯周病とは?
歯周病(歯槽膿漏)とは、歯を支えている骨や歯ぐきが感染して炎症をおこし、腫れ、出血、痛み、グラつき、口臭といった症状が出て最終的には抜けてしまう、とても恐ろしい病気です。
最近ではこの歯周病が、心筋梗塞や脳梗塞、そして糖尿病など全身の命に関わる病気と密接なつながりがあることがわかっています。
歯周病は病巣が末期になるまで痛みや自覚症状があまりないので自分では気づきにくく、サイレントディズィーズと言われています。
そして30歳以上の約8割が歯周病にかかっています。そして50代後半から急速に歯周病が原因で歯を失うようになってしまいます。
歯を失う原因で一番多いのは虫歯ではなく、歯周病です。
この歯周病をいかに抑えるかが、歯を生涯残す鍵なのです。
2 歯周病の原因は?
歯周病は細菌感染です。歯垢、歯石の細菌が歯周病の原因です。歯に付着した細菌は歯垢という固まりになりますが、3ヶ月ぐらい立つと、唾液の中のカルシウムと結合して硬い歯石になります。
歯石はもはや歯ブラシで取り除くことができなくなってしまいます。
そしてこの歯石の裏には、酸素を必要としなくて毒性の強い歯周病菌が増殖していきます。
歯の表面につく白い歯石は『縁上歯石』といい、歯科医院では超音波の器械で容易に取り除くことができます。
しかしこの白い歯石の下に、腫れた歯ぐきから出た血液とつながった黒い『縁下歯石』ができます。
この縁下歯石が歯周ポケットを深くして歯ぐきに炎症を起こして、歯を支えている顎の骨を溶かしていくのです。
縁下歯石は器械を使ってもなかなか取り除くことができません。
取り除く際に痛みが強い場合は麻酔が必要ですし、ついている場所が構造上取り除くことが不可能な場合もあります。
顎の骨の支えのなくなった歯は歯ぐきだけでつながっています。この状態ではグラグラして物を噛むことは難しくまります。
そして最後には歯を失ってしまうのです。
3 ホルモンバランスとの関係は?
ホルモンの中でも、特に女性ホルモンが歯周病と関わりがあります。
女性ホルモンが多くなると歯肉の血管の中の血流量が増えて、腫れたり失血しやすくなります。
そうなると傷口から歯周病菌が入り込み、重症化しやすくなります。
女性ホルモンの変化が大きい時期は、妊娠と出産の時期でしょう。
よく、「出産したら子供に栄養を取られて歯と歯ぐきが悪くなった」などということを聞きます。
これは全くの間違えで、ホルモンバランスの変化と、つわりで嘔吐することで胃酸が口に残って酸性になり、歯が溶けたりするためです。
さらに、気持ち悪くて歯ブラシがおろそかになってしまい、口の中の衛生環境が悪化することも大きな原因です。
また更年期になると、女性は体調が大きく変わります。
これには女性ホルモンが関わっていて、骨粗鬆症の薬であるエストロゲンも女性ホルモンの一種です。
骨粗鬆症とは、骨の中のカルシウムが溶けて骨密度が低くなる病気です。
骨粗鬆症の治療薬は、骨を溶かしていく破骨細胞を作用を止めますが、骨をつくる造骨細胞の発生も抑えてしまうのです。
そのため、この時期も歯周病に羅患する可能性が高まると言えます。
このように女性は男性よりも歯周病になりやすい条件が揃っているので、注意が必要です。
歯周病で顎の骨が吸収していくと、骨を再生することはほぼ不可能です。
もちろん男性もお口のケアを怠れば、歯周病で歯を失いますので頑張って毎日歯ブラシを欠かさないようにしましましょう。